平和と人権と尊厳と~反戦デモで撮影した、声を上げる女性たち~

更新日:2 日前
日本政府が戦争・独裁ができる国づくりのための憲法改正(改悪)を急速に進め、市民社会にもさまざまな問題が蔓延る中、平和や人権や尊厳のために声を上げる人の姿を少しでも多く発信できないかという気持ちで、5月に「Under the Peace Tree」というYouTubeチャンネルを立ち上げた。

報告が遅くなってしまったが、以下、その経緯について書きたい。
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石破政権から高市政権に代わって以降、とくにトランプがイラン攻撃を開始して以降の日本の政治の壊れ方があまりに酷く、全国で頻繁に行われるようになったデモに、僕も4月以降通うようになった。
自民党が憲法改正(改悪)を長年の悲願としてきたことは、長く市民運動をやっている人にとってはよく知られていることだが、それが民主主義のルールや政治家としてのモラルを徹底的に無視した戦後最悪とされる総理大臣の元でいよいよ現実味を帯び、これは自分の生活や時間を削ってでも何か動かないと本当に取り返しが付かないことになるという危機感を募らせたからだった。おそらく多くの人が同じ思いなのではと思う。
そうして、最初のうちはただ頭数になればという気持ちでデモに通っていたのだが、通っているうちに、やはり映像作家として何かしら映像でプロテストすることはできないだろうかという気持ちが強くなってきた。
ただ、一体何をどう撮ればよいのか。一度参加者目線でコール&レスポンスを撮ってXに投稿してみたところ、それなりに拡散はされたものの、そうした映像は自分でなくてもたくさんの人が撮っている。仮に誰か人を撮るにしても、誰でもいいというわけにもいかないし、そんなに大掛かりなことができるわけでもない。そもそも撮らせてもらえそうな知り合いがいるわけでもないし…。
そんなふうに思いながら、5月3日の憲法大集会に参加しようと考えていたところ、たまたま石川優実さんが「公園でchill」として憲法大集会のステージで歌うということを知った。
石川優実さんは、俳優でありながらフェミニスト、アクティビストとしても知られている方で、2019年頃に一大ムーブメントとなった#KuToo運動の提唱者でもある。その当時のことを僕はリアルタイムでは見ていないのだが、のちのち女性差別や性暴力・性搾取について勉強するようになったとき、性暴力・性売買のサバイバーでもある石川さんが書いた文章を何度か目にして、とても共感し、一方的に知ってはいた。
また、その石川さんが近年では歌を歌っていること、そしてソロ活動だけでなく「公園でchill」というユニットで市民運動と表現活動を繋げる音楽活動をしているということを2年前に知って、それらの曲がすごく良くて、自分でも日常的に口ずさむほど好きで、単純にファンでもあった。
そんな石川さんと、4月に性暴力関連のトークイベントではじめてお会いし、少しだけお話しする機会があった。それで、僕自身近年女性差別について高い関心を持ち、現在のデモでも女性の声や役割が非常に重要であると感じていたため、この機会にデモに参加する石川さんを撮らせていただくことはできないだろうかと思い立った。そこには、石川さんがミソジニーを拗らせたネットの匿名男性たち(声を上げる女性を黙らせたいアンチ・フェミニストたち)からさまざまな嫌がらせや印象操作をされている中で、少しでも何か力になれないかという思いもあった。
そうして、確か憲法大集会の3日前くらいだったと思うが、石川さんに打診してみたところ、直前にもかかわらず快くOKをいただいた。そして事前に「公園でchill」のみなさんのリハーサルにお邪魔し、メンバーのババカヲルコさんと宮澤もえみさんにもご挨拶し、憲法大集会当日を迎えることになった。
そうして憲法大集会で撮影したのが以下の2つの映像である。

■公園でchill『憲法実現』ステージ映像(5分)
「社会運動と表現活動を繋げよう!」をテーマにデモや集会で歌を歌う「公園でchill」が憲法大集会2026のオープニングで披露した『憲法実現』のステージ映像。(右からメンバーの石川優実さん、ババカヲルコさん、宮澤もえみさん。)
※「公園でchill」さんのYouTubeチャンネルで公開

■憲法大集会2026に参加して~公園でchill・石川優実さんインタビュー~(11分)
2026年5月3日に有明防災公園で行われた憲法大集会の1日を「公園でchill」石川優実さんの視点で記録したインタビュー動画。市民が声を上げることの大切さや戦争と女性差別についての思いが語られる。
※「Under the Peace Tree」で公開
この日、憲法大集会には5万人の人が集まり、さまざまなスピーチや催し物が行われたのだが、そのオープニングで歌われた「公園でchill」さんの『憲法実現』は、日本国憲法が掲げる崇高な理念を真っ直ぐに希望を込めて歌った曲で、まさに憲法大集会にピッタリの曲である。
「公園でchill」さんは、ほかにも『さようなら自民党政治』などド直球かつユーモアの効いた耳に残る曲を作っているのだが、この『憲法実現』もNHKの「みんなのうた」で流して小さい頃から刷り込んだほうが良いのではと思うくらい中毒性の高い曲で、日本の加害の歴史を踏まえて三原則を表現した歌詞に注目すると、憲法を変える必要どころか、未だこの理念が十分に実現されていないことが良く分かる。
このステージ映像は、「公園でchill」さんのYouTubeチャンネルで公開していただいたのだが、映像制作という自分の本業を生かして具体的に誰かの役に立てたのは嬉しくも楽しいことだった。こうした状況で楽しいというのも不謹慎なのかもしれないが、「戦争反対」も「改憲反対」も全員が当事者だし、苦しいだけだと抵抗も続けられないので、こうしてデモの中で何かの役割を担ってやりがいや喜びを感じるのも、ある種必要なことなのではと思うことができた。
また、石川さんのインタビュー動画も、一人の声を上げる女性の視点から今の状況を切り取るという意味では、ドキュメンタリー作家としての自分の強みがある程度生かせた映像になっているのではと思う。
もちろん、あくまでインタビュー動画なので、「作品」として作ったわけではないし、石川さんという多面的な人間のごく一面しか捉えていないので、もしかしたらご本人的にはいろいろ思うところもあるかもしれない。それでも性被害のトラウマで大変な中、こうして活動を続ける石川さんの気高さや尊厳を少しでも映像に残せたことで、自分の当初の目的をある程度達成することができたと感じたし、何より石川さんだけでなくババさんや宮澤さんも喜んでくれたのが嬉しかった。
こうして、思い切って一歩踏み出したのが、結果的には良い形になって、自分としてはとても安心したのだった。(人に迷惑をかけたくないという気持ちが強かったので。)
そして石川さんのインタビュー動画を公開するときに、自分がこの先継続的にプロテストするためにも、せっかくだから今までの自分の活動の枠組みとは別に、この機会に新しいことを始めるのも良いのではと思い立った。それが冒頭で触れた「Under the Peace Tree」というYouTubeチャンネルを立ち上げることになった経緯である。
以下は改めて、チャンネルの説明文。
ドキュメンタリー映画作家の我妻和樹(ピーストゥリー・プロダクツ)が運営するチャンネルです。戦争や改憲の危機に直面している今、平和や人権や尊厳のために声を上げる人たちの姿を少しでも多く発信し、プロテスト拡張を後押ししつつ、その姿を後世に残すことはできないだろうかという気持ちで開設しました。戦争や改憲に限定せず、さまざまな社会課題を扱って「平和の樹の下で一緒に語り合う」をモットーにした映像をお届けできればと考えています。どのくらい更新できるか分かりませんが、気長に見守っていただけると幸いです。
そして、せっかくこうして始めたチャンネルなのだから、どんどんいろんな人の姿を発信していこうということで、2本目には今回ご縁をいただいた「公園でchill」メンバーのババカヲルコさんに撮影を打診した。
ババカヲルコさんは、ミュージシャンとしてこれまでに人権や女性差別を扱った楽曲を制作している方で、2月に第二次高市政権が発足して以降、国会前を中心にさまざまなデモに呼ばれてコールを担当している方である。
その、よく通る伸びのある声はとても印象的で、Xでもよくババさんのコールを切り取った動画が流れてきていたので、僕もあとになって、「あ、国会前で聞いてたあのコールの主はババさんだったんだ」と知ることになった。それだけ、コーラーはある意味デモにおいて連帯を強める象徴的な役割でもあるので、それを担当しているババさんの思いを是非映像化したいと思った。
そうして、はじめは「5分程度の映像で」と始まったのが、実際に撮影をしてみたところ、ただ国会前のコールの映像にババさんのインタビューを入れただけでは形にならないことが分かった。何故なら、ババさんがどのような思想を持ち、どのように音楽に打ち込み、どのように日常を大切にしているのか、そしてデモに集う人たちがどのような不安や危機感を感じてそこに集っているのか、そうしたさまざまなことを現場の空気感や臨場感を持ってしっかり描いた上でないと、ババさんが全身全霊をかけて紡ぐコールにちゃんと意味を持たせることができないと直感的に思ったからである。
そうして、当初の予定よりも撮影の機会を増やして、改めて撮れたものから構成を考えたところ、想定を大きく超えてババさんの人間的な魅力に溢れたドキュメンタリーに近い映像に仕上がった。それはとても幸せな体験だった。
また、作品にはババさんの楽曲をいくつか使わせていただいたのだが、それがものすごく重要な役割を果たしてくれたことも特筆しておきたい。本当に、ババさんの音楽がなければ形にならなかったと言っても過言ではないので、感謝し尽くせない。
とくに、作中主題歌として使わせていただいている『誰もが誰より幸せになれる』という曲は元々知っていたわけではなく、編集を始めてから、何かインタビューに合う音楽はないか探していたときに知ったのだが、ババさんそのものというか、まさにババさんの世界観を象徴するような曲と感じて一気に引き込まれた。曲と出会ってからのこの4ヵ月間、冗談抜きに毎日口ずさんでいるが、お世辞抜きに、ジョン・レノンの『イマジン』に匹敵する名曲と思っている。(『イマジン』が至高の反戦ソングだとしたら、『誰もが誰より幸せになれる』は至高の人権ソングだろうか。)
それで、この曲を是非作品に使わせていただきたいとお願いし、ライブでも歌ってほしいとリクエストしたところ、快くOKをいただいた。そして、そのシーンが意図した通り作品の世界観とマッチしたため、曲名を転用して『誰もが幸せになるために~ババカヲルコ・平和へのコール~』というタイトルを付け、作品は完成することになった。

■誰もが幸せになるために~ババカヲルコ・平和へのコール~(35分)
政府が戦争・独裁に向けた憲法改悪を進める中、全国でデモが爆発的に増加。そんな中、国会前を中心にさまざまなデモでコールを担当しているババカヲルコさんは、どのような願いをコールに託しているのか。その思いに迫る。
※「Under the Peace Tree」で現在は冒頭3分のみ公開
そして、これはせっかくなので、一度告知して終わりではなくて、ちゃんと多くの人に観てもらえる形で発信したいと思い、「戦争・憲法改悪反対運動拡張ドキュメンタリー」と銘打って1ヶ月の期間限定で配信することにした。以下、そのときの告知画像とプレスリリースの文章である。

<戦争・独裁に向けた憲法改悪の危機の中で>
トランプが開始したイラン戦争を機に、日本政府が急速に破滅への道を辿る中、国民の生活と権利、そして平和を守るため、多くの人がペンライトとプラカードを両手にデモに足を運び始めた。
そのような中で、国会前を中心にデモのコールを担当しているババカヲルコさんは、どのような願いをコールに託しているのか、その思いに迫る。
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~『誰もが幸せになるために~ババカヲルコ・平和へのコール~』期間限定無料配信に当たって~
僕は2008年3月に大学を卒業してから、独学でドキュメンタリーの制作を始めた人間です。今年で41になりますが、20代の頃は、自分の生活や制作活動で精一杯で政治や社会問題に関心が向かず、困難や不平等から正当な怒りの声を上げる人たちに対しても、どちらかというと偏見の目を持っていました。しかし活動を通してさまざまな人と出会い、自分が意識せずに済んでしまっていた問題(差別・無理解等人権を揺るがす問題)に直面している当事者の痛みに触れる中で、30代以降は政治や社会問題を自分事として捉えるようになっていきました。
そのような中で、ここ数年は自民党の人権意識の低さや新自由主義・自己責任論的な政策、そして軍拡・改憲の動きに対しずっと批判的だったのですが、とくに高市政権になってからの日本の壊れ方が安倍政権以上にすさまじく、これは自分の生活や時間を削ってでも何か動かないと取り返しが付かないことになるという危機感を募らせることになりました。おそらく多くの人がそのような思いを抱いているのではと思います。
そうして、初めはただ頭数になればという気持ちでデモに通っていたのですが、何度か通ううちに、自分の継続のためにもやはり映像で何かできることはないだろうかという気持ちになり、平和や人権や尊厳のために声を上げる人の姿を自分なりに発信してプロテスト拡張の一助にしようと「Under the Peace Tree」というYouTubeチャンネルを始めることにしました。今回のババカヲルコさんの映像はその2本目になります。
1本目の石川優実さんに続いて女性を撮影し、女性差別を扱っているのは、自分が単純にお二人のファンだったからというのもあるのですが、戦争や性暴力をはじめとした社会問題の多くが、男性支配的な「有害な男らしさ」と密接に結び付いており、現在のプロテストにおいても女性の声や役割が非常に重要と感じたからです。高市総理が今のようになってしまったのも、自民党の男社会の体質が深く関係していると僕は思います。ババさんの言葉やコールから、そういったことも感じていただけたら幸いです。
今後どのくらい作り続けられるかは分かりませんが、適度に休みながら、自分なりの方法でプロテストを続けていければと思います。
1ヶ月で2,000回再生と、そこまで広がったわけではないにしても、配信期間中にはデモのパブリック・ビューイングで流してくれた方や内輪の鑑賞会を企画してくれた方もいて、それも僕としては嬉しいことだった。また、ババさんご本人が期間中積極的に拡散してくれたのも嬉しかった。
そして、この『誰もが幸せになるために~』が完成したことが大きくて、5月以降制作した3つの映像を活用して、政治や憲法や反戦デモについて考える機会をスクリーンで作っていけないだろうかと考えていたところ、長年交流のある仙台市議会議員のいのまた由美さんが下記のような映像鑑賞と対話の会を企画してくれた。

■イベント詳細ページ
いのまたさんが考えてくれた「憲法実現!彼女たちのプロテストソング&コール」というタイトルを見て、「なるほど、この3つの映像はこういう打ち出し方をしていけばいいんだ」ととても参考になった。
そうして、9月23日(水・祝)に仙台で映像鑑賞と対話の会が行われ、主催者を含めて20人弱の人が参加し、今の政治に対する思いを語り合って、とても有意義な会になった。これについては、次のブログでレポートを書いているので、是非そちらを読んでいただきたい。
■「憲法実現!彼女たちのプロテストソング&コール」レポート
こんな感じで、たくさんの方のご協力をいただいて作ったこの3つの映像を、これからも憲法実現のために活用していきたい。
そして、「Under the Peace Tree」でも、平和や人権や尊厳のために声を上げる人の映像を撮り続けて、自分なりにプロテストを続けていきたい。しばらくは反戦と女性差別に関する映像が続くと思うけど、さまざまなテーマで、ライフワークとして続けていけたらと思っている。
無理のないように、休み休みになると思うけど。




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