講演依頼
我妻和樹監督の講演会を開いてみませんか?
宮城県南三陸町を舞台に『波伝谷に生きる人びと』『願いと揺らぎ』『千古里の空とマドレーヌ』等の長編ドキュメンタリー映画を製作し、映像記録が持つ役割や可能性、そして倫理的な課題について発信し続けている我妻和樹監督。そんな我妻監督の講演会を開いてみませんか?大学の授業やセミナー等(主催者挨拶・質疑応答を含む)での講演や、研究会・シンポジウム等での発表など、さまざまな依頼にお応えします。
<講演タイトル例>
■「震災を経ても土地に生きる~南三陸町波伝谷、12年間の映像記録を通して~」
東日本大震災の津波で被災した宮城県南三陸町波伝谷での映画製作を軸に、震災前の暮らしの特色や震災後の復興(レジリエンス)について写真や映像を見ながらお話しします。震災を経験した一つの地域の歩みを民俗学的な視点からつぶさに知りたいという場合にお勧めです。
■「人と人が支え合うこと~3.11災害ボランティアの事例から~」
映画『千古里の空とマドレーヌ』のワンシーンと本編に登場するボランティアを主人公にした短編映画『微力は無力ではない~ある災害ボランティアの記録』(21分)を上映しながら、被災地をめぐる支援やボランティアのあり方、そして現地に生きる人びとと外から関わる人びとのともに前に進む関係性について考えます。ボランティア講座等でお勧めです。
■「人や地域を記録し、表現するということ~現実との対話をめぐって~」
これまでの映画製作のプロセスを軸に、ドキュメンタリーの役割や可能性、また記録と表現をめぐる諸問題(描く側の倫理と描かれる側の人権等)についてお話しします。ドキュメンタリー製作のプロセスやフィールドワークとメディアの関係について、一人の作家の事例から考えたいという場合にお勧めです。
<経費・監督講演料について>
講演に当たっては講演料(要相談)と旅費(実費)をいただいております。Zoom等オンラインでの発表も可能です。
■我妻監督プロフィール
本サイトの「監督紹介」をご参照ください。
■問い合わせ
<講演「震災を経ても土地に生きる」に寄せて>
宮城県白石市出身の映像作家である我妻和樹監督は、東日本大震災の津波で被災した宮城県南三陸町の漁村「波伝谷(はでんや)」を舞台に、震災前後の12年間で2つのドキュメンタリー映画を製作し、劇場公開しました。
震災前の日常を追った『波伝谷に生きる人びと』では、地方で土地に根差して生きる人びとの普遍的な姿が描かれると同時に、今「被災地」と呼ばれる東北沿岸部にかつてどのような人の営みがあったのかが生き生きと映し出されています。そして震災後の歩みを追った『願いと揺らぎ』では、コミュニティが分断された震災から1年後の波伝谷を主な舞台に、人びとの復興への願いと、それぞれの立場と想いのすれ違いからくる心の揺らぎが、地域の伝統行事復活の過程をめぐって描き出されています。
震災後に被災地に入った映像作家はたくさんいますが、我妻監督のように、震災が起きる6年も前から一つの地域に入り続け、そこに生きる人びとの姿を愚直に見つめ続けた作家はほかにいません。また、元々は大学の民俗調査のために波伝谷を訪れたという我妻監督ですが、民俗学で培われた深い観察力を土台として作られた作品の中には、時代の変化という波に晒されながらも、土地に根を張り、しなやかに存続する地域コミュニティのリアルな姿が映し出されており、それが一層、震災によって変わったもの、失われたもの、それでも途絶えずに続いているものが何なのかを強い説得力をもって教えてくれます。それは災害やそこからの復興に限らず、今私たちが生きているこの時代や人と人との「共生」のあり方を考える上でもとても大事なことなのではないでしょうか。
災害のある日常と隣り合わせに生きている現在の私たち。これまで当たり前と思っていたことが、次の瞬間にはそうでなくなるかもしれないということが、もはや誰にでも、どんな地域にも起こり得ます。しかし厳しい現実に直面してもなお、人は何故再びその土地で、地域とともに生きていこうとするのでしょうか。震災時、そこに居合わせてしまった一人の記録者の目を通して考えることができればと思います。
『願いと揺らぎ』プロデューサー 佐藤裕美